奨学金の返済は、正直きつい。冠婚葬祭が重なった月、車検が来た月、「今月やばいかも」と思ったことは一度や二度じゃないはずだ。
だから最初に言っておく。奨学金の延滞は、3ヶ月が分岐点。3ヶ月まではほぼノーダメージで戻れる。超えると、完済後5年まで消えない傷が残る。一番まずいのは、払えないことじゃなく放置することだ。
俺は夫婦で600万の奨学金を延滞ゼロで完済した。ただ、偉そうなことは言えない。クレカの支払いは遅らせたことがある。そのときは両親に連絡がいって、めちゃくちゃ怒られた。
誰にでも失敗はある。延滞しても落ち込まなくていい。大切なのは、同じ失敗を繰り返さないことだ。
この記事では、延滞したら何がいつ起きるのか、どこまでなら戻れるのか、今日何をすればいいのかを、JASSOの公式データと試算で全部見せる。
奨学金を払わないとどうなるか

まず全体像から。奨学金を払わないと何が起きるかは、すべて「延滞3ヶ月」を境に変わる。
延滞3ヶ月で「傷が残る」に変わる
境界線は3ヶ月。まだ2ヶ月ならブラックリストにも載らない。
だからといって2ヶ月遅らせていいわけじゃない。崖の上でギリギリ耐えてる状態だ。この記事は延滞の流れを時系列で脅す記事じゃない。今、自分がどっちのゾーンにいるかを判定して、次にやることを決める記事だ。
最悪なのは延滞ではなく放置
これは現実社会でも同じなんだけど、
「すみません、遅れそうです。だけど、なんとかします」
っていう人と
「あ、そうなん?(無視)」
だったら、圧倒的に前者に「なんとかしてあげたい」って思うでしょ?
奨学金も一緒で、貸主のJASSOに「すみません」と連絡するのは当たり前。相手が組織だからイメージが湧きづらいんだけど、きちんと謝って「なんとか返します」って意思表示を見せることが大事。
奨学金延滞3ヶ月までは戻れる

先に断っておく。俺は奨学金を延滞したことがない。ないからこそ、延滞したら何が起きるのか、JASSOの規定を全部調べた。
結論。延滞3ヶ月までは、ほぼノーダメージで戻れる。
延滞の全体マップ
▼
▼
―――― ここが分岐点 ――――
▼
▼
▼
緑=ノーダメージで戻れるゾーン/紺=傷が残るゾーン
延滞初月は督促の電話と文書だけ
振替に失敗しても、いきなり差し押さえは来ない。来るのは電話と紙だ。
JASSOの規定では、振替不能になると翌月の振替日に2ヶ月分をまとめて引き落とす。本人と口座名義人には「振替不能通知」が届く。この段階でやることは1つ。次の振替日の前営業日までに、2ヶ月分を口座に入れておく。それだけで終わる。
うちは妻のスマホの残債で、督促の手紙を受け取ったことがある。あれは怖い。見たことない漢字がびっしり並んでいて、書面の圧がすごい。「本当にこの口座に振り込んでいいのか?」と一瞬疑うレベル。でも振り込まないとブラックリストに載る。それが毎月届くから、精神的にしんどかった。
中身を読めば、書いてあることはシンプルだ。「入金してください」。入金したら、それで終わった。
奨学金も最初は同じだ。いきなり差し押さえは来ない。来るのは紙だ。ただし、あの重い封筒が毎月届き続ける生活は、確実に心を削る。
怖いのは督促そのものじゃない。督促の封筒を開けずに放置する自分だ。
延滞金は年3%から始まる
延滞すると延滞金が付く。ただし計算式を見てほしい。
延滞金 = 延滞している割賦金(利子を除く)× 年3% × 延滞日数 ÷ 365
対象は「延滞している月々の返還額」だけ。残債全体じゃない。だから最初は驚くほど安い。具体的な金額は後で試算する。
※年3%が適用されるのは令和2年3月28日以降に発生した延滞分。それ以前の延滞には年5%・年10%の時代があった。
延滞3ヶ月未満なら信用情報は無傷
ここが一番大事だ。個人信用情報機関への登録は、延滞が3ヶ月続いた場合。JASSOの案内では、3ヶ月連続で振替不能になり、次の振替もできなかったとき、債権回収会社への委託と同時に信用情報機関に登録されると明記されている。
裏を返せば、3ヶ月以内に立て直すか、猶予を申請すれば記録は残らない。今1〜2ヶ月延滞して青ざめているなら、まだ間に合う。動くのは今だ。
▼ 延滞3ヶ月未満の人が今日やること
払えるなら、次の振替日の前営業日までに延滞分+今月分を入金する。これで終わり
払えないなら、JASSOの奨学金返還相談センターに電話する。放置だけはしない
来月以降も苦しいなら、減額返還か返還期限猶予を願い出る(詳細は後述)
奨学金延滞3ヶ月からは傷が残る

ここからは、対応しても記録という傷が残るゾーンの話だ。ただし先に言っておく。傷は残るが、人生は終わらない。
延滞の全体マップ
▼
▼
―――― ここが分岐点 ――――
▼
▼
▼
緑=ノーダメージで戻れるゾーン/紺=傷が残るゾーン
ブラックリストは完済後5年残る
延滞3ヶ月で、全国銀行個人信用情報センターに事故情報が登録される。いわゆるブラックリスト入り。
消えるタイミングを勘違いしている人が多い。延滞を解消した日じゃない。完済してから5年だ。延滞中はずっと残り続け、全額返し終わってからさらに5年消えない。
この間にできなくなることは以下のとおり。住宅ローンの審査、マイカーローンの審査、クレジットカードの新規作成、スマホの分割購入。現金一括の世界で生きることになる。
延滞9ヶ月で全額一括請求と裁判
延滞が9ヶ月を超えると「期限の利益喪失」の通知が届く。分割で払う権利を失うという意味だ。
月2万円の約束が、残債数百万円の一括請求に変わる。払えなければ連帯保証人、つまりほとんどの場合は親に請求が飛ぶ。人的保証なら、連帯保証人にも延滞の段階から通知と電話が行っている。親に黙って延滞を隠し通すことは、制度上できない。
それでも払わなければ、JASSOは裁判所への支払督促・訴訟に進む。JASSOは法的手続きをためらわない組織だ。
最後は給与と預金の差し押さえ
裁判を無視した先にあるのが強制執行。差し押さえの対象は主に預金と給与だ。
給与が差し押さえられれば、勤務先に延滞の事実が知られる。逃げ場はもうない。ここまで来て失うのは金じゃない。生活の選択権そのものだ。
▼ もう3ヶ月を超えている人が今日やること
まずJASSO(または委託された債権回収会社)に連絡する。無視だけが状況を悪化させる
払えない事情があるなら、延滞後でも使える「延滞据置猶予」を相談する
返還を再開して完済すれば、記録は完済後5年で消える。ここから先の傷は今日止められる
奨学金延滞の損失を試算

延滞の損失を全部金額に換算してみた。結果は俺の予想と逆だった。
延滞金「だけ」なら数千円で済む
月2万円の返還を延滞したケースで試算する。
延滞しても延滞金は驚くほど安い
月2万円返還・年3%・単純日割りの概算
約100円
3ヶ月延滞
約900円
6ヶ月延滞
約3,900円
12ヶ月延滞
※延滞している各月の割賦金2万円に対し年3%を日割りで積算した概算。出典:JASSO「延滞金」の計算方法に基づき算出
1年延滞して4千円弱。正直、延滞金は怖くない。
だけど、延滞するとそれ以上に大変なことが待ってる。痛みが小さいから、危機感が生まれる前に3ヶ月が過ぎる。本当に失うものは、次で試算する。
延滞の本当の損失は住宅ローンを組むとき
延滞の本当の値段は、延滞金じゃない。信用情報が消えるまでの時間だ。
払う金
数千円
延滞金(1年延滞でも)
失う時間
最長16年
ローンが組めない期間
事故情報が消えるのは完済後5年。つまりローンが組めない期間は「延滞していた期間+一括請求後の返済期間+5年」で決まる。完済が遅れるほど、出口も遠くなる。
600万の延滞で人生の1割が消える
うちの夫婦の600万円で試算した。25歳で延滞を始め、9ヶ月で一括請求を受けたと仮定する。
ローンが組めない期間の中身
延滞9ヶ月で一括請求→分割で完済した場合
(25歳で延滞開始と仮定)
延滞していた期間
返している期間
完済後も記録が残る5年
3年で完済できた場合:約9年(34歳まで)
5年で完済できた場合:約11年(36歳まで)
10年かかった場合:約16年(41歳まで)
※返す相手は、機関保証なら代位弁済した保証機関、人的保証(連帯保証人)ならJASSO。どちらも構造は同じ。信用情報の登録期間は全国銀行個人信用情報センターの基準(完済日から5年)に基づく
ここで大事なのが5年の起算点だ。5年のカウントは、延滞した日からじゃない。返し終わった日から始まる。延滞中も、返している間も、タイマーは1秒も進まない。ずっと登録されたままだ。全額返し終わって、そこからやっと5年。だから3つの期間は重ならず、まるごと足し算になる。
延滞の一番残酷なところはここだ。延滞するのは金がないとき。金がない人ほど完済に時間がかかる。だから貧乏な人ほど、長く縛られる。
そして人的保証(連帯保証人)の場合、親に請求される。一括請求は連帯保証人にも飛ぶ。さらに、請求を受けた連帯保証人が払えないままだと「保証債務未履行」として親の信用情報にも傷が付く。自分の延滞が、親のクレカと老後のローンまで道連れにする。
▶ あわせて読みたい
25歳で延滞すれば、最悪41歳まで家も車も現金一括の世界。30代の買い時がまるごと消える。払う延滞金は数千円なのに、失うのは人生の1割だ。この非対称が延滞の正体だ。
奨学金の延滞は情報弱者税

奨学金の延滞者は多いのか。JASSOのデータで見ると、3ヶ月以上の「傷が残るゾーン」にいる人は13万3千人、全返還者の2.7%だ。
延滞者の多くは「まだ戻れるゾーン」にいる
返還者約432万人の内訳(令和5年度末)
延滞なし:約93%
3ヶ月未満の延滞(まだ戻れる):約19万人
3ヶ月以上の延滞(傷が残るゾーン):13万3千人・2.7%
※出典:JASSO「奨学金事業に関するデータ集」(令和7年1月版)。1日以上の延滞者約32万人から3ヶ月以上を除いた概算
もうひとつ見てほしい数字がある。今は滞りなく返している無延滞者のうち、21.1%は「過去に延滞したことがある」と回答している。つまり5人に1人は一度落ちかけて、戻ってきた。延滞は特別な人の失敗じゃない。そして、戻れる。
延滞者の半数は義務を知らない
JASSOの属性調査によると、「申込前に返還義務を知っていた」人は、無延滞者で88.5%。延滞者では54.4%しかいない。
「借金だと知って借りたか」で延滞は分かれる
無延滞者:申込前に返還義務を知っていた
延滞者:申込前に返還義務を知っていた
※出典:JASSO「令和5年度 奨学金の返還者に関する属性調査」
延滞する人の半分近くは、借金と知らずにサインしている。18歳の高校生が「親に言われたからなんとなくサインした」はあるだろう。だけど、それは紛れもなく借金。
延滞するかどうかは、借りる前からほぼ決まっている。
制度の認知でも同じ差が出ている。返還期限猶予を「返還が始まる前までに」知っていたのは、無延滞者で38.8%、延滞者ではわずか5.4%。延滞者の半分以上は、延滞督促を受けてから初めて猶予制度を知る。制度を知らないまま落ちて、落ちてから知る。これが延滞の構造だ。
延滞の入口は「親任せ」
「親に言われたから借りた」。だが借主は親じゃない。学生本人。
親が「借りてほしい」と言って書類を渡してきても、その欄に名前を書くのは自分。高校3年生よ、そのサインで自分の人生が大きく変わるぞ。
ちなみに、親が子どもの教育のために借りる金は別にある。教育ローンだ。これは親が借りるものだから、子どもに返済義務はない。この違いを知っている高校生なら「奨学金じゃなくて教育ローンにできない?」と聞いてみる手もある。受け入れられるかは別として。
俺のクレカも妻のスマホも、悪意なんてゼロだった。ただ見てなかっただけ。延滞は性格の問題じゃない。知らないことの問題だ。だから防げる。
▶ あわせて読みたい
奨学金を延滞する前にやること

JASSOには公式の救済制度が2つある。どっちも無料。ただし使えるのは、原則「延滞する前」だ。
減額返還で月の負担は4分の1に
減額返還制度。月々の返還額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のどれかに減らし、その分返還期間を延ばす制度だ。
月2万円の返還なら、最低5千円まで下げられる。返還総額は変わらないし、第二種の利息も増えない。1回の願出で最長12ヶ月、通算15年まで使える。収入基準は給与所得者で年収400万円以下。扶養する子どもの数によっては600万円まで緩和される。
年収基準が400万円まで引き上げられた今、返済がきつい20代の大半は対象に入る。「使えるのに知らない」が一番もったいない制度だ。
返還期限猶予は最大10年使える
返還期限猶予。災害・傷病・経済困難・失業などの事情があれば、返還そのものを止められる制度だ。
1回の願出で最長12ヶ月、通算10年まで。猶予期間中、第二種の利息は増えない。ただし元金が免除されるわけではない。返還終了が後ろにずれるだけだ。
失業や休職で収入が途絶えたときの避難所はこっち。収入はあるが足りないなら減額返還。
申請できるのは延滞する前だけ
減額返還の適用条件には「延滞していないこと」がある。延滞を解消しないと願出すらできない。
つまりこうなる。一番制度に助けられるべき延滞中の人が、一番制度を使えない。猶予には延滞後の救済ルート(延滞据置猶予)もあるが、収入基準が厳しくなり、手続きも重くなる。
「やばいかも」と思った今が、申請できる最後のタイミングだ。迷う時間で振替日は来る。
延滞を防ぐ原資は固定費削減で作る
減額も猶予も時間稼ぎでしかない。元金は1円も減らない。
返済を続ける力の正体は、意志じゃなく家計の構造だ。俺は通信費・保険・住居費を削って返済原資を作った。月1万円の固定費削減は、月1万円の昇給と同じ価値がある。しかも今日からできる。
▶ あわせて読みたい
奨学金の延滞は知識で防げる

奨学金の延滞は防げる。もちろん、返さなくていいわけじゃない。借りた金を返さないのは、他人の金を奪うのと同じ。それだけはダメ。
俺が600万を延滞ゼロで返せた仕組み
人間の意志は弱い。だから努力でなんとかするんじゃなくて、仕組みと習慣でなんとかすることが大事。
一番効くのは、給与口座と引き落とし口座を同じにすること。うちのクレカもスマホも、延滞の原因は「払う気がなかった」じゃない。「引き落とし口座に金がなかった」から。口座が分かれていると、毎月「入金し忘れ」という地雷を踏む可能性がある。同じ口座なら、給料が入った瞬間に返済原資が勝手に確保される。忘れるという失敗が、構造的に消える。
そのうえで先取り貯金と固定費削減を重ねれば、延滞の根本治療になるし、貯金ができる習慣も手に入る。
▶ あわせて読みたい
JASSOは相談すれば敵じゃない
ちなみに、JASSOは敵じゃない。相談すれば、制度の範囲で何かしら動いてくれる。
彼らも払えなくなって自己破産されるほうが困る。お金を取り返せないからね。だから両親でもいいし、JASSOでもいいし、AIでもいい。誰かに相談することを恐れないでほしい。
延滞は情報弱者税だ。この記事を最後まで読んだ時点で、あなたはもう大丈夫だ。



コメント